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神社の基礎知識

神社の基礎知識まとめました。

 
※目次をクリックすると目次の下部にコンテンツが表示されます。
  1. 神社の起こり
  2. 本殿の形式の時代推移
  3. 日本建築の主な建築用語
  4. 神明造の概要
  5. 大社造の概要
  6. 住吉造の概要
  7. 流造の概要
  8. 春日造の概要
  9. 日吉造の概要
  10. 八幡造の概要
  11. 石の間造の概要
  12. 神社の要素(拝殿、幣殿)
  13. 神社の要素(本社、摂社、末社、別社、分社、鎮守社)
  14. 神社の要素(鳥居と門)
神社の起こり

●神の社、聖なる土地
 
・神社は文字通り、”神の社”であり、神域をあらわしている。
 
・もともとは、社殿や拝殿を持たず、神が降臨するすると考えられる岩(磐座・磐倉・岩倉:いわくら)、樹木、山(神奈備:かむなび・かんなび・かみなび)、海などを示すものだった。
 
・古くは、この神が降臨する樹木や岩石と祭を行うスペースがあれば、そこが”神の社”になった。
 
●依り代
 
・この神が降臨する対象物の事を”依り代”と呼ばれる。神体などを指すほか、神域を指すこともある。
 
・樹木や巨石などに注連縄を巡らせたものは依り代といえる。
 
・正月に飾る門松も依り代の一種で、神は松のような尖った葉に降臨すると言われている。
 
●サカキ(榊)と依り代
 
・古来から植物には神が宿り、特に先端がとがった枝先は神が降りる依り代として若松やオガタマノキなど様々な常緑植物が用いられたが、近年はもっとも身近な植物で枝先が尖っており、神の依り代にふさわしいサカキやヒサカキが定着している。
 
・家庭の神棚にも捧げられ、月に2度、1日と15日(江戸時代までは旧暦の1日と15日)に取り替える習わしになっている。
 
●本殿を持たない神社
 
・大神(おおみわ)神社
 背後の三輪山を御神体
 
・熊野那智大社
 現在は山の上に社殿があるものの、元来は那智滝に社殿があり滝の神を祀ったものだと考えられる。
 
●仮の社殿の出現
 
・古代の神道では神社を建てて社殿の中に神を祭るのではなく、祭の時はその時々に神を招いてとり行った。
 
その際、神を招くための神籬(ひもろぎ)の周囲に瑞垣をめぐらして注連縄で囲うことで神聖を保った。
 
その入り口に鳥居の原形とある門柱を立てていた。
 
・祭りのときなど神が降臨する時だけに、簡単な仮の祭壇を設けた。(仮の社殿)
 
このような仮の祭壇などの施設が、常設の社殿へと変わっていったと考えられている。
 
※現在でも神社の祭礼(神幸祭)において神輿(みこし)が巡幸の際に、中継点などに仮の社殿を設けて供物などを供え、神輿を迎える。(御旅所:おたびしょ)
 
※神籬(ひもろぎ)
・神道において神社や神棚以外の場所において祭を行う場合、臨時に神を迎えるための依り代となるもの。
・形式は、八脚台という木の台の上に枠を組み、その中央に榊の枝を立て、紙垂と木綿(ゆう)を取り付けたもの。

本殿の形式の時代推移

神社の本殿の形式は、自然崇拝で本殿を持たない時代から本殿の常設、仏教による影響と時代の経過とともに変わっている。
 
時代とともに大まかに下記のように分類できる。

①本殿を持たないタイプ
 
・山、木、岩などに神が宿る。
 
②仏教が伝えられる前の日本独自の形式の本殿
 
・住吉造、大社造、神明造
 
③寺院の影響を受けた形式の本殿
 
・仏寺のように反りのついた屋根となり、土台を設けて縁側と手すりを設置。
 
・春日造、流造、日枝造、八幡造
 
④特殊な形式の本殿
 
・実在した人物の霊を神として祀る場合に多く用いられる。
 
・本殿と拝殿を石の間でつなぐ形式。
 
・権現造(石の間造)、祇園造(八坂造)、浅間造

日本建築の主な建築用語

各建築様式を見ていく際に必要となる建築用語を簡単にまとめました。
 
●部材の名前
 
・軸組
柱と梁と桁で構成。
 
・梁と桁
垂直に建てる柱の上を水平につなぐ部材。長手方向が桁、短手方向が梁。
 
・小屋組
軸組の上に置いて三角形の屋根を構成する部分。
 
・棟木(むなぎ)
母屋や桁と平行に取りつけられる、屋根の一番高い位置にあり屋根の頂上を作る部材。
 
・垂木(たるき)
棟木と桁や梁との間をつないで屋根面のあばら骨にあたる部材。
 
・束(つか)
梁の上に立つ垂直材で棟木を支える部材。
 
●建物の入り口
 
・妻と平
屋根の三角形が見える側を妻、そうでない側を平。
 
・妻入、平入
妻に入り口があれば妻入、平に入り口があれば平入。
 
●屋根の形
 
・切妻造(きりづまづくり)
屋根の最頂部の棟から地上に向かって二つの傾斜面が本を伏せたような山形の形状をした屋根。
 
・寄棟造(よせむねづくり)
4方向に傾斜する屋根面をもつもの。
 
・入母屋造(いりもやづくり)
上部においては切妻造、下部においては寄棟造となる構造をもつ。
 
・宝形造(ほうぎょうづくり)
正方形の平面で寄棟を造ろうとした場合には、大棟ができず、4枚の屋根がすべて三角形になる。これが、六角形であれば「六注」、八角形であれば「八注」という。

●柱の建て方
 
・掘立
柱の下部を直接地中に埋め込んで建てる
 
・礎石建て
地上に据えた礎石の上に建てる。
 
・土台建て
地上に水平に寝かせた木材である土台の上に建てる。
 
●千木と堅魚木
 
・破風(はふ)
切妻造や入母屋造の屋根の妻の三角形の部分。また切妻屋根の棟木や軒桁の先端に取付けた合掌型の装飾板(破風板)をもいう。
 
・千木(ちぎ)
破風を延長したもの、あるいは、X型の木材を屋上に置いたもの(置千木)。
 
・堅魚木(かつおぎ)
棟木の上に短い丸太状の木を横に並べたもの。社殿の形式(神明造、住吉造、大社造)で本数が決まっている。

神明造の概要

・伊勢神宮正殿に代表される建築形式。大社造りとともに最古の神殿建築様式に属する。
 
・弥生時代以降の穀物を納める倉庫である高床で切妻屋根を持つ”校倉”がしだいに神を祀る建物に転用された形式。
 
・屋根は切妻造の茅葺で、掘立柱、正面に入り口のある平入。
 
・両側面に棟木を直接支える棟持柱を立てる。
 
・建物の周りは床と同じ高さの高欄つきの回縁。
 
・破風を延長して千木とし、堅魚木を屋根に持つ。
 
・白木造り、簡素で直線的な構成が特徴。
 
・伊勢地方に多くの例があり、伊勢神宮が代表例。

大社造の概要

・出雲大社の本殿に代表される建築形式。神明造とともに最古の神殿建築様式に属する。
 
・掘立柱、室内中央に新御柱(しんのみはしら)、田の字型に柱を配した平面を持ち、妻入形式。妻の中央に柱があるため、入り口は一方にかたよってつけられている。
 
・建物の周り高欄つきの回縁。
 
・屋根は切妻造で置千木と堅魚木を置く。
 
・特徴の一つとして規模が大きいという事が挙げられる。
 
・出雲地方に多くの例があり、出雲大社が代表例。

住吉造の概要

・大阪の住吉大社本殿に代表される建築形式。天皇の即位儀式である大嘗祭(だいじょうさい)の際に設けられる大嘗宮の建物と類似。
 
・正面二間、側面四間の妻入で、前後に細長く、内部は前後に二室に分かれている。
 
・周りに縁を持たず、建物に接近して瑞垣と玉垣が二重に取り囲む。
 
・屋根は切妻造の妻入で、桧皮葺(ひわだぶき)とし、屋上に置千木と堅魚木を置く。

流造の概要

・京都の上賀茂神社、下鴨神社に代表される建築形式。春日造とともに最も一般的な社殿建築様式。
 
・柱が土台の上に建つ土台建てで、切妻造の平入で屋根は桧皮葺。
 
・千木と堅魚木を載せず、前方の屋根をなだらかな曲線を描かせて延長し、庇としている。
 
・正面間口三間の”三間社”が最も数が多い。
 
・祭神や信仰に結びついていないので、全国に数多く分布している。

春日造の概要

・奈良の春日大社本殿に代表される建築形式。
 
・一間四方の小型のもの(一間社)が多く、井桁に組んだ土台の上に柱を立てて造られている。
 
・切妻造の妻入で屋根は桧皮葺で、正面に扉をつけ、前面にのみ高欄つきの縁があり、前方に階段をつけている。
 
・屋上に置千木と堅魚木を載せ、妻入の正面には庇のように向拝と呼ばれる屋根を設けていて、母屋の屋根と美しい曲線で結ばれている。
 
・春日信仰や熊野信仰に関係のある神社で用いられ、春日大社周辺の近畿地方に分布が限られる。

日吉造の概要

・滋賀県の日吉大社に見られる特殊な建築様式。
 
・御神体のある本殿が母屋で、前面と左右の庇が拝殿になる形式。
 
・屋根は、前面と左右の屋根に庇を取り付けた入母屋造だが、背後には庇が無く軒が切り落とされた形になっている。千木も堅魚木もない形式。
 
・回縁を巡らし、正面中央に階段をつける。

八幡造の概要

・大分県の宇佐神宮に代表される建築様式。
 
・後殿(本殿)と同じ桁行長さの前殿(拝殿)を本殿の前に平行に建て、両殿が”相の間”と呼ばれる部屋でつながれた形式。
 
このような二棟を連結した建築様式は、神殿の内部の空間を広げるために考案されたものと考えられ、寺院建築でも双堂(ならびどう)という類似の形式がある。
 
・両殿とも切妻造の平入で、前殿正面に階段を設け、両殿の周囲を高欄つきの回縁が囲む。
 
・屋根には千木も堅魚木も置かない。
 
・各地の八幡神社で用いられている形式。

石の間造の概要

・本殿と拝殿の2棟を一体化し、間に”石の間”と呼ばれる一段低い建物でつなぐ形式。京都北野天満宮が古代からこの形式であったとされる。
 
・実在した人物を神として祀る宮寺に多く用いられ、神宮と寺院の両方を合わせ持つ形式。
 
絵画などに描かれた豊臣秀吉を祀った豊国廟がこの社殿形式であり、徳川家康を祀った東照宮もこの形式。
 
家康を権現として祀っている事から、東照宮の形式を権現造という。
 
・入母屋造・平入の本殿と拝殿を、入母屋造・妻入の縦の棟で串刺し状に一体化している。屋根の棟数が多い八棟造(やつむねづくり)を採用するものが多い。両殿とも千木、堅魚木は置かない。
 
※八棟造(やつむねづくり)
複雑な形状に配置された棟を多数配置し、それぞれの棟に破風を備えた豪奢な屋根を重ねて配置する建築様式。”八棟”の”八”は多数を意味している。

神社の要素(拝殿、幣殿)

●拝殿
 
・神職などが祭典を行い、参拝者が礼拝するための建物。
 
・祭典が屋内で行われるようになって拝殿建築が発達した。一般的に本殿より大きな建物になっている。
 
・拝殿の建築様式は地域や時代、習俗によって異なり、本殿のように類型化することは難しいが大まかに以下の3つに分類できる。
 
①横拝殿
横長で平入の拝殿
②縦拝殿
縦長で妻入の拝殿
③割拝殿
横拝殿の中央を土間とする拝殿
 
●幣殿(へいでん)
 
・幣帛(へいはく)をまつるための建物。
 
・通常は本殿と拝殿との間に建てられる。権現造の石の間も一種の幣殿といえる。
 
※幣帛(へいはく)
・神への捧げ物のこと。玉串、御饌(みけ)、弊物など。

神社の要素(本社、摂社、末社、別社、分社、鎮守社)

●本社
 
・その神社のおおもとをなし、中心となる祭神が祀られている社。
 
●摂社、末社
 
・祭神と縁の深い神を祀った社。摂社の方が社格が高い。
・本社の境内に祀った境内社と境外に祀った境外社がある。
 
●別社、別宮
 
・本社と祭神は同じで別の場所に設けられた神社。
 
●分社
 
・本社の祭神を分霊して祀った神社。
・必ずしも本社の支配を受けることなく、独立している場合が多い。
・全国の神社の中で最も分社が多いのは稲荷社で、約32,000社ある。それ以外に八幡社、神明社(天祖神社)、天神(天満宮、北野神社)、宗像大社(厳島神社、弁天社)、諏訪大社、日吉大社(日枝神社、山王神社)、熊野大社、津島神社、八坂神社などの分社が多い。
 
●鎮守社
 
・土地に根ざしてその場所を守る神(産土神:うぶすなかみ)を祀る社。
・鎮守社は、村や都市を守る例と寺院を守る例に大別できる。

神社の要素(鳥居と門)

●鳥居の概要
 
・神社の領域である境内への入口。社殿建築が固定する以前から神域の入口に立てられていたと考えられている。
 
・上から笠木、貫と呼ばれる水平材を二本の柱で支えたもの。
 
・神社の様式により様々な形状、材料のものがある。
 
●鳥居の種類
 
①神明鳥居
 
・最も基本的な形で、柱は地面に垂直に立てられ、貫は柱から突き出さない。
・主に伊勢神宮関連の神社で用いられる。
 
②鹿島鳥居
 
・神明鳥居と似ているが、こちらは貫が柱から突き出している。
 
③八幡鳥居
 
・柱は地面に対して少し傾斜(転び)をつけて立てられている。
・笠木の下に島木という水平材が加わり、社名などを掲げる額束もつけられている。
 
④明神鳥居
 
・現在見られる最も一般的な様式。
・八幡鳥居と類似していて、こちらは笠木に反りをつけて曲線的(反増:そりまし)になっている。
 
⑤両部鳥居
 
・柱の前後に控え柱(稚児柱)をつけて貫で連結したもので、神仏習合の神社に多く見られる。
・四脚鳥居、稚児柱鳥居、権現鳥居、枠指鳥居などの別名がある。
・厳島神社のものが代表例。
 
⑥三輪鳥居
 
・三ツ鳥居ともいう。
・1つの明神鳥居の両脇に、脇鳥居という小規模な2つの鳥居を組み合わせたもの。
 
●鳥居の材質
 
・古くは杉、檜などの木材が使われたが、後に石も使われるようになった。
 
・さらに近世になると銅や鉄、陶なども使われるようになり、大正時代には鉄筋コンクリートの鳥居が出現し、しだいに巨大なものも造られるようになった。
 
●門
 
・寺院の影響から門を設けた例もあり、楼門や四脚門がしばしば用いられている。

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